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私の卵サンドが美味しいわけ

 

昼間のお客様には、いつもサンドイッチを作るのが私の定番。ハムサンド、ポテトサンド、ツナのカレー風味サンド、卵サンド-----を小さめに切って洋皿に盛り付け、香りのいい紅茶で勧めます。

凄く美味しいというような評判は未だないけど、馬鹿の一つ覚えで十年一日、同じものを作って出すため今や“名物”です。中で、よく褒められるのは卵サンド。でもなぜ美味しいかと問われたことはないし、ま、リップサービスかと思うぐらいでしたが----。

 

先日、坊やを連れて遊びに来た親戚のテルヨさんに、サンドイッチを振る舞ったら、「この卵サンド、どう作るんですか」と訊かれてちょっとびっくり。だって卵サンドなんて、誰がどう作ってもたいして変わりないでしょ、と思っていたからです。でも彼女によれば、

「これは、卵に空気が入ってふくふくして美味しいです」。


 

ここで思い出したことがある。私は以前、千葉の友人夫妻の家に毎年一、二度泊まりがけで行くことがあり、朝食は私がいつもホット卵サンドを作ったのですが-----。おろし金で卵を下ろすのを見た若い奥さんが、「私はそんなやり方はしない」と色をなして仰る。

「何を使ってどう作っても、美味しく出来ればいいんじゃない」と言うと、フォークで潰して手伝ってくれました。毎年その繰り返しで、結局彼女は、一度もおろし金を使わないで終わりました。

“おろし金で卵を下ろすなんて邪道!”と言いたかったのでしょう。何故おろし金を使うか、私が説明すれば良かっただけのこと。ところが私は何も知らず、ただ仕上がりが良いからそうしていただけ。

ン十年ぶりに真相が解明され、うーん、何ていうか、人生の文庫本サイズのページがさらっとめくれた感じ----でしたっけ。

 


邪道といえば、函館で過ごした高校時代、冬の夜にお米をとぐのが辛かった。氷水のようなとぎ汁に手を突っ込み、シャキシャキ----とやれば、今にも霜焼けができそう。ある日、友人にそれを訴えると、「ああ、それ、泡立て器を使えば簡単よ」とこともなげ。「ええっ」と私は驚いた。ホイップに使うあの安物の器具で、伝統のお米をとぐなんて。「そんなの邪道じゃない?」

「でも私が考えたんじゃない、 テレビでやってたの」

テレビでやれば大体は信じちゃう。以後、私は泡立て器でお米をとぎ、結構便利しました。あ、今は違うけど、それはまたいつか----。 

 

数日後、若いママのテルヨさんが、坊やにせがまれて卵サンドを作り、写真をメールで送ってきました。美味しくできました!って。