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旅の恥はかき捨て

 

こんにちは。遅まきながら、新年初のブログです。1月は体調を崩し(坐骨神経痛)、コロナはまだ蔓延途上、明日からの2月は寒いとか。あまりめでたくない正月の終わりだけど、昨年十一月末の、四国高松までの旅行記を、忘れないうちに書いておこうと。といっても久びさの旅を楽しんだなんて話でなく、一昨年に病没した亡き友への弔問の旅-----のはずが、さんざんだったというお話です。

 

高松までは飛行機が一番だけど、その夜、彼女のいない高松での1泊は寂しすぎる。そこでたまたま神戸に出張する夫に便乗し、新幹線つばさで新神戸へ。昼すぎの到着なので、午後は『横尾忠則美術館』特設展を覗くつもりでした。ところが行きの新横浜改札口から、トラブルは始まった。何故か切符が改札を通らない。駅員さんが調べるうちに発車時間が迫ってきたので、ともかく乗ることに。新神戸では、若い駅員さんが二、三人で奮闘するも、“このツアーを組んだJT Bの発券ミス”と分かるまで、二時間近くかかった。

美術鑑賞は諦め、ホテルから街へ出たのはもう夕暮れ。それからのレストラン予約は、日曜とあってすでに遅しで、電話を入れてもどこも満席。足を棒にして中華街を彷徨ったけど、横浜中華街を知る横浜人としては、なかなか満足できない。意見が合わず夫婦険悪となって、結局最初の夜は、コンビニでお握りとつまみと缶ビールを買っての、部屋呑み。考え得る限り最悪な結果でした。

▲高松市市街


神戸南京町、西安門

『横尾忠則の恐怖の館』展

2022年2月27日(日)まで/開館時間:10:00~18:00/月曜休館/予約優先

詳細は、横尾忠則現代美術館

 

でも翌朝は、元気にホテルを出発。いよいよ高松行きの一人旅です。しかし三ノ宮から高松まで、こうも出にくいとは! 三ノ宮→新神戸→岡山→高松(瀬戸大橋経由)は、紙の上で考えるのと大違い。乗り換え時間はどこも短く、大忙し。この往復に四時間取られて、はるばる訪ねた友人宅では、まだ納骨されていない骨箱に対面し、涙するばかりの二時間でした。ただこの帰りには、三ノ宮駅で夫と待ち合わせて丹波篠山に近い三田(さんだ)まで行き、三田牛にありつけたのが幸いでした。

 

3日目の午前は、何とか「横尾忠則展」に行けたけれども、時間がタイトで、新神戸駅の土産売り場に着いたのは、発車一時間前。店は混んでいて、沢山のお土産を三十分で整えるため頭がカッカ----。何とかカートに山ほど積んで、レジの行列へ。順番が近づいて、財布を出そうとハンドバッグをゴソゴソしていた時、何と、横から若い男性がスッと私の前に割り込んだ。普通なら「並んでます」と注意するけど、この時は疲れきっていて口を聞くのも面倒。黙って男性を追い越してレジへ。すると、これを見たレジのおばちゃんが、「あ、割り込みはだめ!」 -----な、何でこういうことになるの? 

「あの人が先に割り込んで-----」と言いかけたけど、周囲から非難の目がひしひし。これ以上言うのは見苦しく得策ではない。ここはすぐにこのレジを譲って、「こちらへどうぞ」と呼ぶ隣のレジへ。

 


走り出した列車の車窓から、遠ざかる神戸を見ながら、私は自分の愚かさにめげていた。でもトラブル続きのこの旅、「並んでます」と言えば済んだのか。そもそも JTBのミスがなければ、もっとゆったりし、あんな割り込み男に遭遇することもなかった。仕方なかった、と胸で繰り返すうち、ふと思ったのです。「旅の恥はかき捨て?」

それは普通、知った人のいない旅先では、少々の恥はへっちゃら、ゴミなんか捨て放題。後は野となれ山となれ、と楽しんで帰ること-----を皮肉る言葉ですよね。でも別の意味もあるんじゃないかしら。 

“旅の途中は何事もままならないから、仕方ないことがあるもんだよ。本当に仕方なかったのなら、自分の愚かしさを許し、相手の愚行も許して、その恥はかき捨てればいい”と。うーん、手前味噌かもしれないけど、この新解釈で少し癒された気がした私でした。

今年もどうぞよろしくお付き合いください!