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“宣言解除”前夜の銀座にて

9月30日、友人の“会社卒業”のお祝い会があり、ほぼ一年ぶりに銀座のレストランへ。明日からは緊急事態宣言解除になるこの日、惜しくも一日違いでノンアルコール。折から台風16号が接近中で、地下鉄銀座駅の構内では、「今夜は災害が予想されるので、早めの帰宅を----」と繰り返し放送し、どこかざわついた夜でした。

 

集まったのは女子ばかり八名。さる新聞社の女性記者の呼びかけで、通訳、料理研究家、女子アナ、広告代理店勤務-----等々、驚くほど多彩な顔ぶれがたまに会食する集まりで、メンバーが変わりつつも、もう二十年近くのキャリア。でも皆の多忙さにコロナが重なって、この顔ぶれで集まるのは、実に何年ぶりかのこと。その上、マスクを外しての外食は半年ぶりなので、お化粧も久しぶりでドキドキ。お久しぶりが重なって、大わらわ。外出前に天気予報をチェックすると、台風が掠めるので夜は大雨になるという。慌てて服飾計画を見直し-----。何とか早めに着いて店を確かめ、一人でしばし銀ブラを。宵の銀座に人出は少なく、客待ちの車も見えず、通り過ぎる飲食店はどこもガラ空きで、明日が待たれる風情でした。


 

会場はイタリアンレストラン3Fの個室で、アクリル板で対面と仕切り、窓を少し開けての万全の対応。窓からは銀座の賑わいが流れ込むはずが、今は静かなもの。焼き鳥の匂いも焼き栗の匂いもなし。でも室内では「お久しぶり!」の声が賑やかに飛び交い、ノンアルコールのシャンパンで乾杯。-----けどみな軽やかで、雨傘の他に、雨靴とビニール合羽を持参したのは私だけ。天気予報は外れて帰りに雨は降らず、重装備は骨折り損のくたびれ儲けでした。

そういえば似たようなことがありました。去年の別の会合で、予報を信じ雨靴で出かけたら雨なんてどこ吹く風。おまけに間違えて一時間早く着いちゃったから、重いドタ靴で雑司ヶ谷の町を歩き回るはめに。でもおかげで“鬼子母神堂”を見れたし、この町が四谷怪談の舞台だったと知ったのが、せめてものご褒美でした。

 

さて前日に岸田首相が決まったせいで、話題はつい“自民党総裁選”の噂話に。色気ないけど、でもメンバーにマスコミ関係の方が何人かいるためか、いつも他では聞けない裏話で盛り上がります。さらに抱腹絶倒は、芥川麻実子さん(エッセイスト、交通評論家、文豪のお孫)のお話。麻実子さんは八王子“道の駅”の初代駅長であるため、“八王子祭り”では仮装に引っ張り出され、お姫様役や、殿様役を頼まれるそう。初めて知ったけど、八王子には昔、八王子城という北条氏方の山城があったんですね。

その山にある八王子神社の祭礼で、毎年19台もの山車と行列が市内を練り歩くとか。鎧兜の武者姿で馬上の人になった爽やか麻実子さん。想像するだけで面白く、ご本人も楽しんでるようだけど、重い甲冑姿で馬に乗り降りするのは、至難のワザなんだって。いま腰痛に苦しんでおいでなのは、そのせい----?

 ということで、森真沙子の銀座ルポはこれでお終い。そして今日は、台風16号で十月が始まりました。ベランダでは萩の花が風にしなっています。宣言解除になった今月は忙しくなるかな。また何か見つけてルポします。よろしくお付き合いください!

 

▲八王子神社の創建は平安時代。戦国時代の天正10年(1582)頃、この地に北条氏照が城を築き八王子城と呼ばれるようになった。


八王子城跡自然公園。