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猫に目薬

三ヶ月半ぶりの“こんにちわ”ですが、いよいよどん詰まりですね。今年は色々あり、大した成果もない割にやたら忙しくて-----。

 

やっと仕事納めして顔を出した忘年会で、さる男性が、猫の爛れ目に目薬をさすコツを話してくれ、これが笑えました。

まず猫を膝に抱いて背後から抱え、その両足を膝で押さえ込む。次に両耳を掴み、ピッピッと左右に引っ張るんだそうな。その次に左手で左耳を抑えつつ、指先で左目をこじ開け、右手でサッと目薬をさす、続いて右眼もこじ開け目薬を-----。これをアッという間にやって、猫が正気に戻る暇を与えないそうです。これ、馴れというより、天性の達人じゃないでしょうかね。人間も似たようなもんと思えて、笑っちゃいました。 

 


思い出したのは、バイトでさるお役所の窓口係をしている、ご近所のSさん(四十二、三の主婦)。あまりやる気はなかったパートの仕事が、最近モテモテで重宝がられ、フルタイムに昇格したそうな。今“カスハラ(カスタマーハラスメント)”が官公庁の悩みのタネと言われますが、Sさんはその応対で異才の持ち主だったのです。

「またムズカシイお客様が来てるから、頼む」と言われて行くと、「仕事休んで来たのに、ハンコと保証人とが揃わないと、この書類が取れんたァどういうワケだ?」「この件についてワシに報せが来ンのは、ジンケン侵害だ!」

-----等々、お客様は苦情と怒りで荒れ狂っている。

しかし彼女は慌てず騒がず、ニコニコして頭を下げ、あれこれ優しい言葉で何やら説くうち、あれよあれよで相手は籠絡されてしまうとか。丁寧で品が良く庶民的な美人----ということもあるでしょう。でもそれだけじゃない。Sさんはきっと、言葉や仕草で相手を封じ込める“猫目薬”の達人だったんだと、納得しました。

 

さて我が身を省みると、まずそんな達人にはなれません。ただ、せっぱ詰まってくると誰しも、エイヤッと自分で自分に“魔法”をかけなくちゃならない時がある。じつは日頃から仕事がのろい私が、この四か月、珍しく家に垂れ込め、旅行も呑み会も観劇も遠ざけ、しゃにむに仕事してました。暴れて逃げ出さないよう、耳を引っ張ったり目を覆ったり、何とか自分を封じ込めておくのが大変-----。お笑い番組(落語も含め)を見て、ゲラゲラ笑ってる時間が良いですね。

 

そんなわけで、アッという間に今年ももうすぐ終わり。年末のお定まりの一つは、クリスマスが終わった翌日から、「黒豆」を煮始めること。黒豆好きで、高校時代からン十年作り続けてるけど、今も昔もコツは“根気”、蛍火でじっくり煮ることです。

 

そういえば昔読んだ土井勝の料理本に、「黒豆を天井に放り投げると、ベチャッと貼りつくほどに」柔らかくせよ、とあったっけ。そのためには最低八時間は煮ないと。気の短い私はせいぜい六時間で、とても天井にくっつけるなんて神業はできません。でもシワ一つなく艶やかに真っ黒に仕上がった黒豆は、ゴージャスな極上の宝物のように、私を幸せ感で満たしてくれます。

 

今年も読んでくださって有難うございます。

来年もまた皆様に、幸多き年でありますように!

ついでながら、『柳橋物語2』が新年一月半ばに出る予定です。こちらもどうぞよろしくね。