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桜に想うこと その1


 桜花爛漫の京都へ行ってきました-----と言えば、当節「この季節、あの喧噪の街へよくぞまあ!」と呆れられることでしょう。  

 

 まさにその通りのモミクチャ状態でしたが、同じ喧噪でも、以前と少し様変わりしたように思うのは、八坂神社・祇園界隈をぞろぞろ歩く、ピンクや赤のけばけばしい着物をまとった若い女性グループ、羽織袴の男性とのカップル、子連れ一家が目についたことです。  

 

 その数は恐ろしく多く、どこかでお祭りでもあるのかと思ったほど。タクシーの運転手さんやお店の人に聞いた話では、どうやら中国人の貸衣装屋が、ウオッシャブルの化繊の着物、帯、草履一式を二〜三千円で貸し出したら、大ヒットしたのだとか。 従ってこの着物姿の多くは中国人観光客であり、国に帰ってその写真を皆に見せびらかすのが、ステイタスなんだって。 ただ、日本女性も結構いました。そういえばもう十年近く前に、私、舞妓さんの衣装で祇園の街角に佇む日本女性二人を見かけ、エッと思った覚えがあります。

 

 舞妓さん? と一瞬、胸ときめかしたものの、そんな所に暇そうに立っているのは変だし、着物もどこか安手で、帯の結び方がだらしなかったので、そっくりさんと分かりました。その少し後、その貸衣装が人気上昇中だとテレビで見て、驚いたのですが、

まさかこんな形で中国観光客に流行するとは-----。祇園界隈では、“あんなもん着物やない”と大ブーイングだそうですが、中国人だからこそ思いついた商売でしょう。知恵者がいるものですね。  

 

 さて、桜です。まず新幹線の車窓や、神戸、京都で見た限りの印象では、今年の桜は何となく桃色が薄く、白っぽい感じがしたのは、私の気のせいでしょうか。とはいえ京都では、さすがに見応えがあり、歴史が桜をインスタ映え(?)させる一面もあるのかもしれません。特に、高瀬川に映る夜桜は妖艶で凄みがありました。  

 

 幼いころから、桜の記憶と共に生きるこの国では、おそらく一人一人に、忘れられない桜、桜にまつわる思い出があることでしょう。

次回はそんな話をしたいと思います。