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料理レシピの謎

水も、調味料も、火加減もレシピ通りなのに、途中で水が足りなくなって慌ててカップ一杯の水を足す、なんてことありません?私、「簡単手抜き料理」の実践家ですが、よく怒ってます。

およそレシピ通りに作って、美味しく仕上がるのは数えるほどです。それは腕が悪いから、といつも自分のせいにしてしまうけど、本当にそうでしょうか。不足したカップ一杯の水は、一体どこへ消えてしまったのかしら。

 

例えば「豚の生姜焼き」__。実に簡単な料理ですが、いつも参考にしている、さる有名女性料理研究家のレシピがあります。これ、美味しいんですが、何度やってもその調味料の分量じゃ、敷きキャベツと炒めた豚肉にからめるには、少なすぎる。でもテレビで見た時、先生はその分量でたっぷりかけ回しておられた。どういう手品だろうと怪しみつつ、それなりに分量を調節し、結構美味しく頂いてはいますが----。

 

「大根と豚バラの煮込み」。このレシピは、「600gの大根を2センチ厚さのいちょう切りにし、豚バラ150gと炒め、1カップのダシ汁と調味料(計大さじ4)で、汁が無くなるまで煮る」。2センチの大根なら、下茹でしないと、フタをして15分は煮ないとね。でもそれにしては、このダシ汁と調味料では少なすぎ! 

また、フタをせよと書いてないので、うかつな私など“落しブタ”にしかねず、それでは永遠に柔らかくなりません。

 

 


なにせ、手間ヒマかけずに早く美味料理に到達したい手抜き派だから、要所だけはきっちり書いてほしいのね。「フタ」をして圧をかけるのか、「落とし蓋」にして水分飛ばすのか。中火か弱火か。

この料理は結局、ダシ汁と調味料を二倍にし、厚さを少し減らし、フタと落し蓋を調節して15分煮れば、美味しく仕上がると判明。つまりレシピにもいろいろあるから、失敗は必ずしも、こちらの腕や頭が悪いとばかり言えないってことです。

 

それはそれとして、さらに私が思う“最大の謎”は__。練達の料理人って、そのレシピに全てを書いていないんじゃないかってこと。特に、たまにテレビに登場する京料理の板長さんや、フランス料理の有名シェフは、「この先はあんたらには教えられへん」と、その極意を、隠しているように思えてなりません。 

 

でもそれこそ、ゲスの勘ぐりというもの。教えたくても、言葉ではうまく伝えられるものじゃない、ということでしょうか。同じ弱火で10分煮ても、あちらさんはふっくらと仕上げるのです。

あれよあれよと消えてしまった一カップの水が、あちらさんと私の距離なのかも-----。いろいろ考えると、レシピに謎があって然るべきかもしれませんね。

さて今日は何を作りましょう。