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元旦に起こりやすい奇妙な出来事

 

 

   新年おめでとうございます。正月も過ぎた頃合いに、薄い塩味でキリッと食べる七草粥って絶品ですね。もっとも私は平成最後の元旦の午後、麻布十番の旧友(独身男性)宅に招かれ、山海の珍味に埋もれてから胃の調子を崩してました。

 

   その超高層㍇には簡単には入れず、迷ったら生きて出られそうにない厳重チェックのお城。二十何階かにあるその部屋は「空中座敷牢」みたいで、ある種の息苦しさは禁じ得ない。でも雲ひとつない正月晴れの空の下、東京湾を越えて千葉の山々まで見える眺望が、その閉塞感を救ってくれます。

 

ちなみに眼下に林立するビル群はほぼ、旗本屋敷や大名屋敷の跡地に建っている。幕末には、すぐ下を流れる古川「一の橋」で清河八郎が、少し上流の「中の橋」ではヒュースケンが暗殺されています。でもこのモダンな街は、そんな幕末の血みどろの痕跡など、すっかり飲み込んでしまっています。

 

   私は手製ローストビーフと黒豆を持参したけど、おせちはここで食べるのが一番。四段重ねの大きなお重に、叩き牛蒡、冬タケノコの煮物、鴨のロースト、海老芋、モツの洋風煮込み、タコの何とか和え----等々がぎっしり! この家の主は、さる出版社を退職後、調理師の免許を取り、出張料理人を引き受けているほどの腕前です。 


   さてお酒が入リ、私はいい気分で、その午前に見た「芸能人格付けチェック」なるクイズ番組の話を持ち出したけど、さすがに誰も見ていない。それは盆栽、陶器、ワイン、牛肉----などに亘って、試飲したり試食したりしてA Bどちらが本物(高級)か当てるのです。

これが皆、なかなか当てられない。全問正解はX JAPANのヨシキとGACKTのチームでした。

「Aは脂肪が多くて柔らかく、 Bはやや歯ごたえがあるけど噛むとジワッと肉汁が出てくるんだって。どちらが神戸牛?」と私が、食通らしい皆に問うたら、全員が Bを挙げました。(ちなみにAがグラム何千円かの神戸肉、Bは七百円前後の普通肉だそう)

 

   その翌日、何気なく前日のテレビ番組表を見ていてエッと思った。

「格付けチェック」は元旦夕方六時からのオンエアとなっています。そこに出ている写真もヨシキ・GACKT組みや 浜田雅功です。でも私はその日の昼前には、その番組を見ていたのです。

はてさて、これは一体どういうこと?

 

   ところが詳細を思い出そうとすると、その番組をいつ見たのか、果たして元日午前だったか大晦日の夜だったか、思い出せない-----。考えてみると暮に仕事納めしてから、大掃除、買い物などで忙しく、大晦日はおせち作りに大わらわ。紅白歌合戦も最後の四十分だけしっかり観て、その後もワイン飲みながらグズグズ夜更かし----。元日の朝は寝不足で起き、急いでお雑煮作って新年を祝い、それから新年会のドレスアップしつつ、テレビも見てた?

どうやら私は旧年から新年への橋を、モーローと、幽霊のように渡ったらしい。もしかしたら別次元に入り込み、時間軸も狂って、夕方からの番組を朝のうちに覗いてしまったんじゃないか?

そんな途方も無い疑いが、ほんの一瞬頭をよぎったのでした。

 

    でもちょっと調べれば、何のこともない。私が見たのは「2018年」版だったのです。去年の番組を、大晦日か元旦の午前に(調べる気もしない)再放送しただけのこと。

GACTとヨシキはそのハイセンスを生かし、毎年出場して連勝してたんですね。驚いたことに私は去年もそれを見ていて、ヨシキファンになったのを思い出しました。

これはもう時空のよじれなんかじゃなく、私の脳内のよじれだったのでした。

    そんなこんなですが、今年もどうぞよろしくお付き合いください。