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来月、新刊が出ます!


   三十五度の炎天下、汗をかいて(?)宅急便が届きました。八月半ばに発売予定の時代小説、『柳橋ものがたり』の校正ゲラです。それから部屋に閉じこもってゲラを直すこと、一週間ばかり。クーラーで冷やしてるのに、何と、汗をかかされたことでしょう。

 

 構想、書く、送る、ゲラ直し、出版-----という一連の流れの中で、最も緊張し汗かくのは、ゲラを見る時です(私の場合ですが)。何故って、自分の才能なさに、改めて対面する思いがするから。何とか気を取り直し、本腰を入れるまでに、一日くらいはかかります。後は一気に頑張って、昨夕、駅近くのクロネコヤマトから出版社に送付。一仕事終えた虚脱感に浸って東急ストアへ。枝豆やらトマトを買いこんでいる最中、店員さんの視線で、ふと気がついた。足に巻いた冷房用のレッグウオーマー、片方、脱ぎ忘れていたのです-----。 

 

 ということで八月半ばに、二見書房から、新シリーズ『柳橋ものがたり』が出ます。『日本橋物語』の姉妹篇みたいものですが、あちらは天保、こちらは幕末。このころの柳橋は、新興の花街として、江戸で一番人気だったようです。長く続いてきた幕府にガタがきて、あちらこちらが軋み、弱い者がはみだしていく。そんな、時代から降り落とされた人々のルツボみたいな趣きが、柳橋にはあるんですね。

▲京都・祇園花見小路

▲東京台東区にある柳橋


  そのいい例が、窮乏したお家の借金を背負って、花街に身を沈める幕臣の娘たちです。その多くが柳橋を選んだのは、伝統に縛られた吉原より、約束事の少ない新興の町が入りやすかったから。お客も、そんな柳橋芸者の素人くささを面白がったそうです。

 

 この物語の主人公は、似たようなミステリアスな過去を抱えて“就活”し、神田川河口の船宿の女中になる綾、二十八歳。「家政婦は見た」ではないけれど、さまざまなことを目撃し-----。

 そうそう、柳橋を愛したお客には、幕臣はじめ土佐の山内容堂など大名も多く、明治に入れば伊藤博文や山形有朋など元勲も顔を揃えます。かれらは実際に熱いラブストーリーを繰り広げたようで、そんな実話も織り交ぜて描く、欲望と哀感の柳橋__。ぜひ読んでくださいね。

 

 それにしてもこの暑さは何でしょう。

 函館の友人からの電話では、向こうの今日は二十四度だそう。羨ましい。願わくばこちらも、ある朝、ふと目覚めたら雨の音が-----なんて日があるといいですね。皆様どうぞご自愛を。