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アルコール依存症って?

山岡鉄舟
山岡鉄舟

 

   昔は「アル中」「酒乱」と言ったけど、今は「アルコール依存症」。両者は同じですが、語感はちょっと違います。一口に「依存症」といっても、そのグレーゾーンにはいろいろありますからね。

 

  病気とは思えないけど“お酒にだらしない人”、“酒癖の悪い人”なんてざらにいます。大酒呑みだった私の父は、晩年は禁酒してましたが、死んでみたら、押し入れに酒缶がぎっしり詰まっていたんだって。

 

   前回も触れた山岡鉄舟は、若い時から大酒豪で、一斗酒を空けても酒に呑まれることはなかったと。後年はさすがに、“一日一升”と奥方に決められたようですが、後に弟子が語った話では、朝稽古が終わると、奥方に内緒で一杯引っ掛けていたそうで---。

 

もっとも江戸の酒は五〜八度で、今よりずっと薄かったようです。現代の酒はほぼ十五度前後だから、これを一斗呑んだら、さすがの鉄舟といえども急性アルコール中毒で入院でしょう。

蔵元が作るのはミリンみたいに濃い酒ですが、これを樽に詰めて地方に送り(税対策や運搬コストのため)、酒屋が割り水していたとか。

 

  でもこの薄いお酒を愛飲した江戸人にも、やっぱり大トラがごろごろしてたんですね。量を沢山呑めば同じだろうし、焼き鳥やチーズを肴に呑む現代人よりは、酒が浸透しやすかったでしょう。

  

   時代背景も違い、幕府が潰れそうとなれば、武士は毎晩でもヤケ酒呑んだでしょう。酒が入れば、“人斬り包丁”を振り回して町人を脅す輩が多かったし、“辻斬り”が横行し斬り捨てご免だったと、『幕末百話』(篠田鉱造)に載ってます。